ヒンヤリとして美しくて、とても哀しい映画だった。
多数派の偏見は閉鎖的な空間で生まれ、複雑で屈折した力に変化する。対抗的に発生した形態は、悪しき存在として認識され抑圧的に処理される。
状況は違えど、身に覚えありな感じだ。しかしセックスをあんなに綺麗に描写するなんて、なんと素晴らしい作品か
世界の終わりと僕の始まり
長らく読書から遠ざかっていた。退廃的に過ごしていた23歳、冬の話だ。
複雑な理由で大学進学がダメになり、悲観的に大阪に出てきた僕は、内容の無い生活を、ただダラダラと何年か過ごした。
僕自体を構成する本質的な要素が、決定的に欠けていると、自覚しながら場当たり的な生活に慣れきっていたのだ。
フラリと入店した古本屋で、いざなわれるように、世界の終わりとハードボイルドワンダーランドを手にとった。
忘れていた感覚が、体の内側でゆっくりと、再生された。
閉鎖的でどこか喪失感漂う主人公。つねに理知的に物事を解決し、思慮深く生きている。
そうだ、僕は論理的でありたかったのだ。それも絶対的に。
今の僕を作り出しているのは、まぎれもなくこの本であり、村上春樹の表現力である。
特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE